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焚火と法律

焚火をすることは、法律で禁じられています・・・・というような話をときどき聞きますが、本当でしょうか?

焚火は慎重に

焚火は危ない、むやみにするものではない、というのは事実です。

火災の危険

実際、国内では1年間に焚火が原因で4,000件近くの火事がおこっています。これは、総出火件数の8%にあたります(平成25年(1月〜12月)の消防統計)。


それで、火災の危険という点から、次のような場所では、それぞれの法律にもとづいて焚火が禁止または許可制となっています。

○自然公園法の自然公園特別保護地区(法第21条第3項)
○自然環境保全法の原生自然環境保全地域(法第17条)
○都市公園の中の指定場所以外の場所(施行令第18条)

ほかにも、消防法にもとづいて市町村長が制限した場所とか、文化財保護法によって重要有形文化財などとして指定された建物周囲などがあります。危険な場所や大切なものがあったりする場所では、管理者によって裸火が禁止されているのは当たり前ですね。

近隣環境への影響

火事にならないまでも、注意しないと、洗濯物が汚れる、住居の外壁に煤(すす)がつく、悪臭が発生するなど、ご近所の迷惑にもなりかねません。

ダイオキシン

さらに、ダイオキシンが出るのではないか、ということで危険視する向きもあります。実際、かつて日本焚火学会を取材に来た某アウトドア雑誌の記者の第一声は「焚火をするとダイオキシンが出ませんか?」というものでした。
たしかに、90年代後半に湧き上がったダイオキシン騒動は、かなりヒステリックなものでした(ダイオキシン類対策特別措置法は99年制定です)。青酸カリの1万倍ともいわれる猛毒のダイオキシンの発生を放置しておけば、人類の滅亡につながるのではないか、というような勢いでした。
最近では、当初いわれていたような急性毒性はそれほどでもなく、慢性毒性についても疫学的に有為な証拠がみつからない、というような状況だそうです。
だから「よい」と短絡的に言うわけにもいきませんが、200万年とも400万年ともいわれる焚火の歴史を考えると、いまさら言われてもねえ、というのが正直な気持ち・・・ですよね?

法令では・・・

いずれにしても、いまの日本で、どこでも自由に焚火をしてよいわけではありません。場所を選び、きちんとマナーを守らないと、火災の危険につながったり、ご近所の迷惑になったりします。
それで、法律ではそのあたりがどういうふうに規制されているのか、調べてみることにしました。

消防法

まず思いつくのは、消防法ではどうなっているのだろう、ということです。
消防法では、「焚火はだめ」とは言っていませんが、関連する条文がいくつかありました。

関連する条文

第3条

焚火については、第3条の類推適用となる可能性はありそうです。第3条には、次のような難しい記述があります。

第三条  消防長、消防署長その他の消防吏員は、屋外において火災の予防に危険であると認める行為者又は火災の予防に危険であると認める物件若しくは消火、避難その他の消防の活動に支障になると認める物件の所有者、管理者若しくは占有者で権原を有する者に対して、次に掲げる必要な措置をとるべきことを命ずることができる。
一  火遊び、喫煙、たき火、火を使用する設備若しくは器具(物件に限る)又はその使用に際し火災の発生のおそれのある設備若しくは器具(物件に限る)の使用その他これらに類する行為の禁止、停止若しくは制限又はこれらの行為を行う場合の消火準備
(二以降略)

要するに、焚火をみつけて、消防署の人が危ないと判断したら、それをやめさせることができる、ということですね。

第22条

また、第22条では、火災警報が発令されているときに、条例にしたがって火の使用が制限されるとされています。

ちなみに、火災警報は、県から来る火災気象情報にもとづいて市町村が出します。
火災警報の発令基準は市町村によって異なりますが、警報が発せられることはめったにありません。
たとえば、統計のある中濃消防組合によると、平成25年1年間に県からの情報を144回受信していますが、警報の発令は0回となっています。

罰則

第3条、第22条に違反した場合は30万円以下の罰金または拘留に処されます。
消防法では、火災警報発令中も含めて「危険な形で焚火をしてはいけない」と言っているのです。

市町村条例

消防法は、技術基準や行政手続きの細目などを、市町村条例に委任しています。これを受けて、市町村は火災予防条例などをさだめています。

実は、そのなかに「火災予防上必要な事項」という位置づけで、いわゆる「横だし」項目として「火災に紛らわしい」行為の規制を行っているのです。これが、われわれの正しい焚火が法令と直接関係する接点です。

火災と紛らわしい煙等を発するおそれのある行為

ただし、規制とはいっても届出です。火災と間違えて通報があったりした場合に、消防署のほうで事態をきちんと把握しておいたほうがよい、という趣旨だそうです。また、届出の際に、延焼の危険を避けるとか、消火の用意をしておくとかの行政指導ができるのですね。

たとえば、広島市火災予防条例では、危険な可燃物の近くで草焼きなどをしてはいけない、焚火をするときには延焼の危険がないことを確認し、消火の備えをしなくてはいけない、火災警報が出たときは焚火をしてはいけない、などといった決まり(第26条、30条)のあと、「雑則」のなかで、火災と紛らわしい煙等を発するおそれのある行為等の届出を義務づけています(第57条)。

第7章 雑則
(火災と紛らわしい煙等を発するおそれのある行為等の届出)
第57条 次に掲げる行為をしようとする者は、あらかじめ、その旨を所轄消防署長に届け出なければならない。(中略)
(1) 火災と紛らわしい煙又は火炎を発するおそれのある行為
((2)〜(6)略)

罰則はとくに見当たりませんが、横だしなので、罰則などをつくりずらかったのかもしれません。

参考のために、広島市の届出書の書式を掲載しておきます。

火災と紛らわしい煙等を発するおそれのある行為等の届出書の例

廃棄物の処理と清掃に関する法律

「廃棄物の処理と清掃に関する法律」という法律があります。昭和29年にできた「清掃法」を抜本改正して昭和45年にできました。
その後毎年のように改正して現在にいたっています。
この法律の目的は、第1条に書かれていて次のようになっています。

第一条  この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。

つまり、「生活環境の保全及び公衆衛生の向上」であって、火災の危険性を云々ということではありません。

薪は廃棄物かどうか

ここで言っている「廃棄物」とは、「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く)」を言うのだそうで(第2条)、問題は焚火で燃やす薪が廃棄物に該当するのかどうか、ということになります。
廃棄物なら、この法律に従わなければなりません。
結論的にいうと、広島市環境局への取材では「燃料は廃棄物ではない」ということで、薪は燃料ですから、この法律の適用は受けません。
ただし、たとえば刈った草を燃やすなどといった場合に、気持ちとしては不要なものを処分して、あわよくば土壌改良に役立てようということですから、微妙なケースもあります。

焼却禁止

廃棄物であれば、それはもう「焼却禁止」という文言が雑則第16条の2にあります(こちらでも焚火は雑則扱いですね)。

(焼却禁止)
第十六条の二  何人も、次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない。
一  一般廃棄物処理基準、特別管理一般廃棄物処理基準、産業廃棄物処理基準又は特別管理産業廃棄物処理基準に従つて行う廃棄物の焼却
二  他の法令又はこれに基づく処分により行う廃棄物の焼却
三  公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却又は周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却として政令で定めるもの

これには、なんとすごい罰則があります。消防法の比ではありません。

第二十五条  次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(中略)
十五  第十六条の二の規定に違反して、廃棄物を焼却した者

これに驚いて、「焚火をやったら怖い」という強迫観念が生まれ、「焚火は法律で禁じられている」という風説につながったのではないでしょうか。
しかし、ここは冷静に第3号「政令で定めるもの」をみてみましょう。ありました。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令
(焼却禁止の例外となる廃棄物の焼却)
第十四条  法第十六条の二第三号 の政令で定める廃棄物の焼却は、次のとおりとする。
一  国又は地方公共団体がその施設の管理を行うために必要な廃棄物の焼却
二  震災、風水害、火災、凍霜害その他の災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な廃棄物の焼却
三  風俗慣習上又は宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却
四  農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却
五  たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの

たとえば、刈った草をクグシで燃やすとか、机の横のゴミ箱に捨てた書類を燃やすとかは、「たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの」に堂々該当するといって、誰が文句をいうでしょうか。
したがって、法第16条の2(焼却禁止)にはなんら抵触しません。

結論

○焚火をするときは、その場所で裸火が禁止されていないことを確認しましょう。
○焚火をするときは、周囲の家などに迷惑がかからないよう気をつけましょう。
○焚火をするときは、近くに延焼の危険がないか、消火の準備ができているかどうかを確認しましょう。
○焚火をするときは、軽微な焼却であるように心がけましょう。
○火事とまちがわれそうな焚火をするときは、消防署に届けを出しましょう。

日本焚火学会では、大会時にはきちんと消防署に届けを出していますし、燃料である薪を燃やすほかは、日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却以外の焼却を行っていません。

以上

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