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最近の更新

焚火の一節文庫

これまでに、みなさんから寄せられた(9割方は学会員の湯木貞義氏の発見によるものです)焚火の一節を、下記に列挙します。
単なる列挙で、順不同・濃さまちまち・敬称略、といったところですが、この山のような目もくらむ焚火コメントを、どうか順序不同でお楽しみください。
そのうち見やすくなるようにシステムを刷新する・・・・・かもしれません。


生きている兵隊   ( p11 )

石川達三 中央文庫

火事が自然に消えてしまうと夜が来た。部隊本部の裏庭では四五人の兵が焚火をかこんでいつもの様に薩摩芋を焼いていた。焚火の中で壊れた椅子が火を吹きながら曲がっていた。

生きている兵隊   ( p13 )

石川達三 中央文庫

・・・[連隊長西沢大佐]が煙草を咥えてぶらりと焚火に近づいて来たのであった。部隊長[大佐]はみなの敬礼を受けてから焚火に手をかざし、何か良い匂いがして居るのうと云った。

生きている兵隊   ( p33 )

石川達三 中央文庫

民家を占領し床の上で焚火をして飯盒の飯を焚きながら、倉田少尉はまた今日の日記を丹念に書いた。

生きている兵隊   ( p52 )

石川達三 中央文庫

・・・民家の土間に椅子に持ち出し、支那鍋に盛り上げた焚火のおきに手をかざしてまた水筒の冷酒を飲みはじめた。

生きている兵隊   ( p61 )

石川達三 中央文庫

いま、夜の焚火にあたって飯を炊きながらさっきの殺戮の事を思い出しても玄澄の良心は少しも痛まない、むしろ爽快な気持でさえもあった。

生きている兵隊   ( p77 )

石川達三 中央文庫

伍長はこの夜倉田少尉と同じ営舎で焚火をかこんで相変わらず子供のように鼻水をすすっていた。

生きている兵隊   ( p111 )

石川達三 中央文庫

もうすぐ南京だぞ。すると兵たちは夜の焚火の前で股をあぶりながら口々に言うのであった。
「南京までは死なれねえな」

生きている兵隊   ( p124 )

石川達三 中央文庫

「十二月八日、コレガ最後の日記トナルヤモ知レヌ。一死悔ユルトコロナシ」
倉田少尉は手帳にそう記してしまうと鉛筆をぴしりと折って焚火の中に投げこんだ。

白狼の牙(上)   ( p284 )

峰隆一郎 学研M文庫

篝火がパチパチと音をたてて火の粉を散らす。森の中から落ち葉や枯れ木を拾って来てたき火をする者もいた。五月とはいえ夜になると冷える。

白狼の牙(上)   ( p290 )

峰隆一郎 学研M文庫

残った十一番組から二十番組の二百人は、それぞれの組に別れて、たき火をはじめる。

白狼の牙(上)   ( p291 )

峰隆一郎 学研M文庫

篝火とたき火で、境内は明るくなっている。浪人たちの顔を赤く照らしていた。

乱世幻記(二)   ( p147 )

仲路さとる 学研

風魔小太郎とその手下は、たき火をたいて囲んでいた。それは暖をとるためではなく、灯りを求めてのことである。

乱世幻記(二)   ( p149 )

仲路さとる 学研

小太郎は、たき火を挟んだ真っ正面に言い放つ。
「俺たちに気づかれずにそこまで接近するとは、たいした奴だ。どこの忍びだ」・・・・・
影がさらに近づく。そして、たき火の灯りで顔の輪郭がゆれて見えた。

乱世幻記(三)   ( p44 )

仲路さとる 学研

川辺ではたき火がたかれている。忠勝は、即座に火にあたる。手を火にかざし、次に背中と尻を火に向けて暖まる。

天下大乱   ( p<一>184 )

津野田幸作 学研歴史群像新書

さほど大きくない姫路城に大軍が入っているので、兵達は至る所で夕餉の焚火を焚いて、思い思いに休んでいる。

天下大乱   ( p219 )

津野田幸作 学研歴史群像新書

燎原の火のごとく、無数の焚火が焚かれ、炊飯の煙が野原を覆う頃、ようやく羽柴軍が山崎の地に姿を現した。

天下大乱   ( p232 )

津野田幸作 学研歴史群像新書

焚火の側にいた五、六人の雑兵達が立ち上がり、怪しい影を追ったが、すでに何処ともなく逃げ去った後であり、その痕跡すらわからなかった。

天下大乱   ( p178 )

津野田幸作 学研歴史群像新書

・・・それに、貴殿の兵達は濡れてさぞ寒かろうと思いますゆえ、焚火を焚いて濡れた衣服を乾かし、兵を温めてくだされ。寒さに凍えていると、いざという時に身体が動きませぬゆえ。

天下大乱   ( p243 )

津野田幸作 学研歴史群像新書

大岩山山上では、盛政の命によって焚火を大きく焚き、佐久間隊が頑張っていることを敵味方に宣伝していた。

天下大乱   ( p283〜284 )

津野田幸作 学研歴史群像新書

当然、従う各隊は秀吉の本体を守るように陣立てし、暖を取るために盛大な焚火を焚いた。
原野一杯に焚かれる焚火に気づいたのか、間も府中城からの使者が本陣を訪れた。・・・・案内の小姓の後から、平服の利家が盛大に焚かれる焚火を背にして、秀吉の前に現れた。

天下大乱   ( p<二>112 )

津野田幸作 学研歴史群像新書

昨夜は山中の各陣所に点々と明かりが見えていた天王山は、勝利を誇示せよという秀吉の命を受け、今夜は山頂だけに盛大な焚火が赤々と炊かれている。
その明かりは勝龍寺城だけでなく京からも見えるほどであった。

天下大乱   ( p<四>51 )

津野田幸作 学研歴史群像新書

しかも兵を労る羽柴秀長は寒さ対策に、先鋒の関勢の前方に百名近くを先発させて、峠の至る要所要所に大きな焚火を焚かせ、弱った兵達に暖を取らせ、凍傷で倒れるのを防ぐ工夫をした。

天下大乱   ( p146 )

津野田幸作 学研歴史群像新書

全くだ。だが、そんな敵のことを心配するより、早く関ヶ原の城に入り、暖かい焚火を燃やして、それを肴に酒を飲み、身体の芯から温まりてえ。

ユーモアSF傑作選   ( p172 )

豊田有恒編 集英社文庫

(酷憂鉄道)
長距離電車の乗場の下にくる。やや広まったところに、焚き火のあとがあった。

ユーモアSF傑作選   ( p176 )

豊田有恒編 集英社文庫

(酷憂鉄道)
ついたところは、もう一本の地下道のところだった。そこに十人ばかりの人たちが、身を寄せ合うようにかたまっている。そばに焚き火があり、十人ばかりのボロボロがたむろして、肉を焙って食べていた。

ユーモアSF傑作選   ( p177 )

豊田有恒編 集英社文庫

(酷憂鉄道)
由美がうっとうめいた。見ると焚き火のそばに、犬の頭が転がっていて、血のついた生々しい骨が捨ててあった。

徳川家光   ( p[1]218 )

山岡荘八 講談社

もしまた、無理に焚火などで乾かしましては、とても大海原の波濤には耐え得ぬ由にて・・・

徳川家光   ( p[2]248 )

山岡荘八 講談社

もうわかった。膝を崩して、これへ寄られよ。まだ片づかぬ火事場故何の馳走もならぬがの、この焚き火と雑炊、われらと共にくつろいであがられよ。

新真田十勇士   ( p(2)82 )

仲路さとる 学研M文庫

なんだ。ならばあれは、たき火かなにかだろう。村の連中が狼煙をあげてどうするというのじゃ・・・・・・
しかも、その場所は、これから目指そうとしている鬼籠砦の方角である。こうなると、たき火とは思えない。

新真田十勇士   ( p218 )

仲路さとる 学研M文庫

その夜、廃屋の前で、大助たちはたき火を焚いていた。・・・・・・
たき火も、暖をとるためというよりも、明かり取りのためといったほうがいい。見あげれば、満天の星空である。

新真田十勇士   ( p221 )

仲路さとる 学研M文庫

お百合どのは、みんなと外でたき火にあたっておられます。

あなたに不利な証拠として   ( p122 )

ローリー・リン・ドラモンド 早川書房

彼は死ぬづっと前に一度、あなたをテキサスの丘陵地帯へ鳩撃ちに連れて行ったことがある。父娘の旅行はめったにないことだった。十七才のあなたは、焚き火が父の顔をちらちらと照らし、近くの岩にぽつぽつ滴るのを眺めながら、温もりと安らぎを感じた。

幸村大戦記   ( p<1>18 )

神宮寺元 学研歴史群像新書

両側に杉の木立が道の左手奥、半町(五十メートル余り)ほど先で、たったいま誰かが焚火を消した。
幸村はその火を、確かに見たのだ。

幸村大戦記   ( p19 )

神宮寺元 学研歴史群像新書

幸村は先ほど焚火が消えたと思われる場所の近くまで来ると、軍兵衛に命じ、木立に向かって松明を掲げさせた。

幸村大戦記   ( p62 )

神宮寺元 学研歴史群像新書

焚火に木片をくべながら、宗茂は夜が明けるのを待っている。関ヶ原方面の情報はほとんど伝わってはこなかった。

幸村大戦記   ( p185 )

神宮寺元 学研歴史群像新書

そのような中で、立花宗茂の軍勢だけは意気盛んである。消えかかった焚火に、もう一度火をつけんとするような意思の強さを感じさせる動きだった。

幸村大戦記   ( p<3>164 )

神宮寺元 学研歴史群像新書

一両日中に、本丸の庭で大きな焚火を燃やす。その直後に、猛烈な攻撃をけけてくる。

幸村大戦記   ( p185 )

神宮寺元 学研歴史群像新書

本丸で焚火を焚いた真田の計略に、見事に嵌ってしまいました。高崎の兵が上手に誘き出されて討ち取られ、あまつさえ城まで取られてしまうとは・・・

幸村大戦記   ( p223 )

神宮寺元 学研歴史群像新書

だが、戸村勢が近づいていっても、屯所のところには篝火の焚火もなかった。それどころか、人気がまったくないのだ。
・・・常に徳川兵が監視をしていた。ところが、その夜は焚火がなかった。小山はひっそりと静まり返り、闇の中に眠っている。

幸村大戦記   ( p224 )

神宮寺元 学研歴史群像新書

少し前まで焚火が行われていたことは、燃えかすを見ればわかった。

漢字   ( p187 )

白川静 岩波新書

葬送ののち、また多くの儀礼を経て、死者の霊は宗廟にかえる。死者のためには、新しい位牌が作られた。新は斧を加えた新しい木を意味するが、それは神聖のために用いるべきものであった。その木を神の憑り代とすることが定められると、それにしるしの辛を加えた。それは神の宿る木である。薪は神に供える木であった。

日本の神話伝説   ( p189 )

吉田敦彦+古川のり子 青土社

クシヤマタは鵜に変身して海に潜り、海底の粘土を咥えてきてそれでたくさんの皿を作り、また海布の茎を刈り取ってきて燧臼(ひきりうす)を作り、海蓴(こも)の茎で燧杵(ひきりぎね)をつくり、この燧臼と燧杵を使って火を鑽り出して立派な料理を作った。
・・・・・・・・・
この私が燧り出した火は、高天原では、カムムスヒの充足した神殿に煤が長々と垂れ下がるほど盛んに焚き上げ、地下では、底の岩にとどくまで焼き固まらせよう。

日本の神話伝説   ( p223 )

吉田敦彦+古川のり子 青土社

妊娠するとお産薪を船二つも買い込む。西表島に米作りに行った人たちが薪を持ってくる。二十一日間は家人が松の木片で大きい丸太に火をつけて夜昼焚いているので、畑にも出られぬ。・・・
(沖縄・竹富島)

日本の神話伝説   ( p343 )

吉田敦彦+古川のり子 青土社

昔、むしろうちというところで、姉と妹がたき火をしていると、そこに山姥が出てきて、大きな乳房をたき火で暖めはじめた。すると見る間に乳房がますます大きく膨らんだかと思うと、山姥はその乳房をひろげて、姉のほうをまきとり、山にさらって行ってしまった。
何日かあとで、妹は姉のかたき討ちをしようとして、前と同じ場所でたき火をして浜からひろってきた石をまっ赤に焼いていた。そこに、また山姥が出てきて、乳房を火で暖めはじめた。
それで乳房が大きく脹れて広がったところに、妹は焼いた石を投げこんだ。山姥は、いつものくせが出て、その焼け石を乳房で巻きとってしまって、「おお痛い、おお痛い」と言って、泣きながら逃げて行った。それでその通った場所を今でも大板(おおいた)と呼んでいる。

沈黙   ( p89 )

遠藤周作 新潮文庫

夜がきました。監視の男たちがたく焚火の赤い火は、我々の山小屋からもかすかにみえました。がその海岸にはトモギの部落民たちが群がり、ただ、暗い海を凝視していたのです。

沈黙   ( p101 )

遠藤周作 新潮文庫

風は草原の端から端へながれ、眼をつぶると、その風のなかに何か焦げたような臭いがまじっているのを感じて体を起こしました。
焚火のあとでした。誰かが前にここを通り木の枝を集めて燃やしたのです。五本の指をその灰の中にいれると、まだ奥のほうにほのかな暖かみさえ残っていたのです。

昔ばなしの謎   ( p114 )

古川のり子 角川ソフィア文庫

鬼火焚は九州地方で広く行われる正月の火祭りの一種で、年の境目に現れる鬼を火で追い払うことを目的とする。
・・・・
子供たちはこの夜、親から、鬼が鬼火の燃え跡に餅を埋めておいてくれてあると教えられ、翌朝早く行って、灰の中から焼けた温かい餅を探し出して食べるものであった。(鹿児島県宮之城町 村崎真智子「鬼火焚と焼畑農耕文化 焼き殺される山の神」『えとのす』32号)

昔ばなしの謎   ( p188 )

古川のり子 角川ソフィア文庫

嫁一行が玄関先に着くと、冷酒で軒端の盃をする。其時萱束のたいまつを燃やす。ツキ衆は玄関から上がるが、嫁は手引婆に伴われて庭ン戸口則ち勝手口から入り、台所を経て納戸におさまる。・・・
(熊本県 柳田國男『婚姻習俗語彙』国書刊行会)

戦陣日記

河野友行著 田辺怜子自費出版

・・・敵線ではたき火することもできず、外とう1枚で寒さをしのぐ・・・
(2014年11月17日付中国新聞15面で出版を紹介)

光の帝国(常野物語)   ( p128 )

恩田陸著 集英社

・・・コマチ先生は上着と味噌汁を持っていったが、岬は口をつけようとしない。夜は冷える。ジロ先生が焚き火をして岬に付き添った。

巨鯨の海   ( p272 )

伊東潤 光文社

すでに鯨は納屋衆の手に渡り、解体作業が始まっていた。焚火で焼いて食べるために、肉の一片ももらおうと納屋の方に足を向けると、浜辺で一人、ぼんやりと佇む男がいる。

巨鯨の海   ( p275 )

伊東潤 光文社

去り際、五十集船が来るまでに、このことを常吉に告げるよう命じられた弥惣平は、重い足をひきずり、皆が集まる焚火に向かった。

巨鯨の海   ( p332 )

伊東潤 光文社

神津島の人々は遭難者の救助に慣れており、焚火などで体を温めると、衝撃で死んでしまうことをしっていた。

さかさま世界史(怪物伝) ラスプーチン   ( p13 )

寺山修司 角川文庫

・・・森の中で悪魔の饗宴を催しているという。彼らは娘たちがわしの愛撫に身をまかせ、わしらが木の小枝で大きな焚火をたき、その回りを讃歌を歌いながら、踊りまわると主張する。そこまでは彼らのいう通りだ。だが、わしは燃えさかる炎の上で、こうも叫ばなかっただろうか。「罪によりわが身を貶めよ、肉を試み、堕落により汝の誇りを克服せよ」と

津波救国   ( p36 )

大下英治著 講談社

・・・しかし、あまりに寒くて何もしゃべることができずにいた。そこに、浜口梧陵の使いの者が迎えにきた。彼は焚き火にあたらせ、ようやく人心地ついたという。

夏の朝の成層圏   ( p50 )

池澤夏樹著 中公文庫

・・・確実に燃えあがったところでもう一つの殻に火を移した。それを大がかりな焚火にするのは簡単なことで・・・白い煙が盛大に立ちのぼった。

夏の朝の成層圏   ( p51 )

池澤夏樹著 中公文庫

それから二時間ほど彼は焚火の世話をしながら海を見ていた。

夏の朝の成層圏   ( p76 )

池澤夏樹著 中公文庫

・・・缶の表面に書いてある文字を一つ残らず焚火の揺れる光で読み、・・・

夏の朝の成層圏   ( p107 )

池澤夏樹著 中公文庫

・・・光に誘われて虫が集まってくる。焚火より電灯の方が多く虫が寄るようだ。

夏の朝の成層圏   ( p119〜120 )

池澤夏樹著 中公文庫

島の小道を巡り、椰子の木に登り、小屋の前で食事の準備をし、焚火をかこんで喋る島の人々の姿がおぼろげに見えた。時間がたった。

夏の朝の成層圏   ( p137 )

池澤夏樹著 中公文庫

記憶と現実をつなぎあわせる作業は楽しい。そこははじめて貝を食べた浜であり、何の跡も残っていなかったが、いつも焚火をした場所であり、いきなり実が目の前に落ちてきたので驚いた椰子の木であり、さらに行けば彼がこの島へ上陸したあの浜であった。

夏の朝の成層圏   ( p159 )

池澤夏樹著 中公文庫

かつて、この話が焚火のまわりで、あるいは雨の日の小屋の中で、蜒々と語られた時、この話はもっと錯綜し、混乱し、語り手は途中でたびたび言いよどんだことだろう。

忍者物語   ( p165 )

東郷隆著 実業之日本社

(はるの城)
村々の者、煙草いたすまじきこと。百姓女房、良き小袖用いざるべきこと。祭りの要とて村々の竹木を切り、焚火の柴といたさざること・・・

忍者物語   ( p219 )

東郷隆著 実業之日本社

(川村翁遠国御用噺)
そりゃあ、ひでえものでさ。あいつらお国振りとかで、船頭から飯炊(かし)きまで三日に一度は薬っ食い(肉食)すっだ。猪肉(ももんじ)が手に入らねえときは、近所の犬を蹴っ殺してな。腹ァ裂いて生米を詰め込む。焚火にそれを放り込んで皆で食うんだ。

忍者月輪   ( p236 )

津本陽著 中央公論新社

三人は忍者でなかれば途中で殺され、身のまわりの物のすべてを奪われたにちがいなかった。日が暮れたのちは、伝兵衛たちは焚火にあたっている盗っ人たちのあいだに身を入れ、体をあたためることもあった。

火男   ( p46 )

吉来駿作著 朝日新聞出版

「風は赤城の山から吹くと聞くが、お主も風が好きか」
・・・
「おれもだ。風に吹かれると気持ちが良い」
・・・他に何がある。・・・
「焚き火が良く燃える」

火男   ( p46 )

吉来駿作著 朝日新聞出版

京と鎌倉とを束にして焚き火に焼べてやろうと思っている。

火男   ( p78 )

吉来駿作著 朝日新聞出版

好きな焚き火もできない。雨が降り続いた後に親父が死んだからかもしれん。

火男   ( p81 )

吉来駿作著 朝日新聞出版

この風の中で焚き火がしたい。

火男   ( p108 )

吉来駿作著 朝日新聞出版

「燃える土はどうする」「焚き火に焼べるがよい」それが父の答えだ。最後の言葉になった。

火男   ( p221 )

吉来駿作著 朝日新聞出版

・・・死んだ親父は、燃える土で盛大な焚き火をしたいと言っていた。この焚き火は死んだ親父への供養の焼香だ。

火男   ( p226 )

吉来駿作著 朝日新聞出版

「そうだ。おれは、火男だ。子供の頃から焚き火が好きだった」
「焚き火だと」・・・・
「焚き火に鎌倉の大軍が怯えて逃げだしたか。鎌倉の兵はみな、焚き火で焼かれた栗の実か」

火男   ( p237 )

吉来駿作著 朝日新聞出版

おれは焚き火がしたかっただけだ。もともと京の都で焚き火をするつもりだったが、この城に来て、お主等と会えて、良い焚き火が出来た。

名画読本   ( p101 )

赤瀬川原平著 知恵の森文庫

(ブリューゲル「雪景色の狩人たち」)
さて近景の狩人は三人。その左の焚き火の周りに五人。この火がいい。風景としては無風のようだが、この焚き火を見るとけっこう風が強い。全体に涼しい雪景色の中で、この焚き火のところだけポッと赤い。この涼しい雪景色の中での小さな貴重な発火点だ。その小ささが、この雪景色の空気を分厚く感じさせる。

知っているようで知らない古事記   ( p70 )

睦月影郎著 イースト・プレス

残念ながら彼は死んだ。狩りの最中、焚き火の火が広がって運悪く焼け死んだのだ。もう諦めろ。

切断(熊野詣での理由)   ( p41 )

木村龍輔著 文芸社

・・・キャンピングカーや4WDが数台停まり、色とりどりのテントの花が咲いている。すでに、キャンパーがうごめき始め、焚火の煙が真っすぐに昇ってから、川上に少し流れているのが見える。

家康、江戸を建てる   ( p67 )

門井慶喜著 祥伝社

水源は、ここからは見えない。
距離は二里弱ほどなのだが、途中に台地があり、視界をさえぎっているからだ。命令はのろしで伝えられることになる。
半左衛門の命を受け、わらわらと人足どもが集まった。松のやにの多い部分をがらがら積んで火を点じ、派手に黒煙をたちのぼらせる。
ほどなく。
台地の向こうから白煙があがった。
-----命令はたしかに受け取った。堰を切ったぞ。注意すべし。
そういう合図だった。

家康、江戸を建てる   ( p358 )

門井慶喜著 祥伝社

(山すそに立ち並んだ素焼きの窯に石灰石を詰め、上から木炭を落として)
作業が終わると、人足は全員いったん窯から離れた。そうして、べつの一団があらためて窯の上にのぼる。めいめい松明を手にしている。少し離れた田んぼのまんなかに立っていた人足頭の老人が、チョチョッと鳥のように舌を鳴らして、
「切り火ーぃ、入りょうびょーぅ」
さびさびと声をのばしたのが合図だった。彼らはいっせいに、
「入りょうびょーう」
「入りょうびょーう」
と和すと、松明を穴へさしこんだ。木炭に点火したのである。
あたりは、もう夕闇が濃い。
人足たちの顔もわからぬほどだった。ほどなく窯の火がまわりだし、穴から橙色の光がちらちらと洩れた。五十以上ものフットライトが背後の山を漆黒の一枚絵にした。

ウンコに学べ!   ( p64 )

有田正光/石村多門著 ちくま新書

(元禄の農学者宮崎安貞の「農業全書」を解説して)
灰糞(火糞)は藁を始め、「日常掃除の塵あくた」に至るまでさまざまなものを蒸し焼きにした灰で、病虫害の心配がない。・・・・・「牡蠣・蛤の類いの貝殻を灰に焼いたもの」なども挙げている。

新選組読本   ( p450 )

司馬遼太郎他/日本ペンクラブ編 光文社文庫

「泊まる部屋がないとあらば、それもよかろう。今夜は戸外で、焚火をして暖をとることにする」
と、けんもほろろの態度だった。
夜に入って、芹沢は門下の隊士を集め、ほんとうに大焚火をはじめた。新見錦、平山五郎、平間重助、野口健司などいずれも水戸脱藩の荒くれだが、この連中に手当たり次第焚木を集めさせ、面あての火の手をあげた。

ゲーテとの対話(上)   ( p321 )

エッカーマン著(山下肇訳) 岩波文庫

ヨハネの祭の火を絶やすな、
たのしみをゆめ絶やすな!
箒は掃けばいつもすりへり
子供はあとからあとから生まれでる

パラドックスの面白さがわかる本   ( p49 )

香川知晶著 河出書房新社

・・・アナクシメネスは、空気は濃くなると冷たくなり、薄くなると暖かくなると考えました。つまり、空気(風)は希薄化されると火になり、濃厚化すると水、さらには地になるというのです。

縄文人からの伝言   ( p152 )

岡村道雄著 集英社新書

アイヌ民族は、この世にあるすべての物は天上のカミガミ(カムイ)が姿を変えた物であると考えていました。それらの生き物や道具、つまりカミガミが、この世での役割を終え、天上に帰る・送る場合は、集落近くの川辺などに「送り場」を設け、幣棚をたて、火を焚いて感謝をこめて送りました。

日月両世界旅行記 第一部   ( p67 )

シラノ・ド・ベルジュラック著(有永弘人訳) 岩波文庫

・・・薪を一本、或いはその他の可燃物をとって、それに火をつけてください。それが燃えると彼等はいうでしょう、木であったものが火になったと。しかし私は否と主張します。即ちそれが燃えさかっているときでも、マッチを近づけない前より火がふえたわけではないというのです。ただ薪の中にかくれていて、冷気と湿気のために四方にひろがることも行動することも妨げられていた者が、外国に救けられ、その力を抑圧していた冷気に対抗して全軍を糾合し、敵が占拠していた陣地を奪ったのです。それもそのはず、その者は障碍もなくなり、自己の獄卒を尻目に凱歌を挙げているのですから。あなたは水が、いま交えた戦いにまだからだをほてらし、湯気を立ててその棒の両端から逃げて行くのをごらんになりませんか。上の方に見えるその焔は最も純粋な、最も物質から遊離した火で、従って逸早くわが家に帰る用意をしています。

折々のうた   ( p144 )

大岡信著 岩波新書

おのが灰おのれ被りて消えてゆく木炭の火にたぐへて思ふ (太田水穂)

柳田國男全集23 こども風土記   ( p83 )

柳田國男著 ちくま文庫

・・・白髪の翁が囲炉裏の脇で、膝の子の小さい手をおさえながら、
  ひいひいたもれ
  火が無い無いと
  この山越して
  この田へおりて
などと歌ってきかせているのも、単なる昔なつかしの情を超えて、我々を教訓しまた考えされる。火もらいは燧石の普及よりも、もう一つ以前の世相であった。

柳田國男全集23 火の昔   ( p199 )

柳田國男著 ちくま文庫

全体に世の中は昔よりもずっと暮らしよくなっている。ことに火については昔の人は苦労をした。そうしてさらに気の毒なことには、そのいろいろの苦労がもう忘れていまわれようとしている。火の話をする際には、ぜひともそれを言わなければならぬのであった。

柳田國男全集23 火の昔   ( p244 )

柳田國男著 ちくま文庫

(東京から遠くない山麓の村で)
・・・親の代から使っていたという古い灯明の道具が、まだこわれもせずに物置の隅っこに転がっておりました。あの辺では通例これをヒデバチと呼んでいます。擂鉢の形に石を彫り窪めた器に、簡単な足をつけて、その真ん中で松のヒデというものを燃やすので、最も古風な道具であります。ヒデというのは関東地方の方言で、東京の人も知っています。年経た松の樹の脂の多い部分を、伐って細かく割いたもので、これを五本か六本か鉢の中に立てかけて燃やすのです。・・・・
関西ではこの松のヒデのことをコエ松といっております。東北ではアブラ松、浜松付近ではベタ松ともいいますが、脂があっていくらかべたべたするからでしょう。岐阜県でロウ松というのは、蝋の代わりという意味、京都付近でジンドといいますが、ジンは芯のことらしく、松のジンまたは松のツノという所もあります。珍しいのは鹿児島県の広い区域で、これをツガマツということで、ツガもやはりあかしにするという意味があったらしく、・・・・・・・・

柳田國男全集23 火の昔   ( p299 )

柳田國男著 ちくま文庫

・・・火を焚けば必ず昂奮して、いつまでも話をして睡らないということであります。人が近くに顔を見合しつつ、続けて物を言うようになった始まりは焚火の傍かも知れません。話と炉端との因縁は深いものがあったようです。

柳田國男全集23 村と学童   ( p514 )

柳田國男著 ちくま文庫

肥前五島の小値賀島の千灯篭などは、これもまた一部落の雨乞のためであって、今は子供が主になって岡の上で大きな火を焚き、後でそれを松明に移して下って来るのであった。各戸が協力し、またどういうことが願わしいのかを、はっきりと胸に持っているのでなければ、この大掛かりな願望も実はただの慰みに過ぎぬのであったが、それまで考えている者は、果たして町にもあるかどうか、よっぽど不確かなものになっている。

柳田國男全集23 村のすがた   ( p568 )

柳田國男著 ちくま文庫

大きな農家では炉が二つ、一つは広敷にあって若い衆や作男、たまには旅の人も寄って来て火にあたった。内の者は通例茶の間の炉を囲んで、主翁も必ずその横座に出て座ったのである。灯油の生産が普及するまでは、夜の明かりと言えばここより他にはないから、炉端の生活は賑やかなものであったと想像せられる。

さまよえる湖   ( p43 )

スウェン・ヘディン著(岩村忍訳) 角川文庫

(タクラ・マカン砂漠のほとりのクム河を船で下りながら)
暗くならぬうちに右岸に上り、テントを張って夕べの火を燃やした。・・・
夕暮れ近く、空は美しく晴れわたり、永遠の星がキャンプの上にきらきらと輝いた。料理人と船頭たちの焚火から、煙が星の方へと立ち昇り、沈黙する砂漠の神秘な無限が周囲をとりかこんだ。

塩の道・米の道  16神々の道大山街道   ( p247 )

山本茂実著 角川文庫

月もない山の深夜、杉木立ちは黒々と不気味な静寂の中に沈み、その奥にいくつかのたき火をかこんで、ひそかにたむろする一団の人影があった。・・・・
たき火の数としい、あたりの雰囲気から察して、少なくとも百にあまる人馬が、この杉木立ちの奥にひそんでいた。・・・・
その峠への道を松明をかかげて、必死に駆け上がっていく二人の騎馬武者があった。その松明の火が黒い杉木立ちの間を、まるで生きもののように、二条に流れて、峠の上にその蹄の響きが近づいてくると、黒い影はいっせいにその場を立ち上がり、たき火をけって一団となり街道筋に駆け上がっていった。

星の巡礼   ( p9 )

パウロ・コエーリョ著(山川紘矢+山川亜希子訳) 角川文庫ソフィア

師はまださやにおさめられている私の剣を大空へ高くかかげた。たき火の炎がパチパチと音をたてた-------それは良き前兆だった。

潮目-フシギな震災資料館   ( p20 )

片山和一良、中村紋子著、ポット出版

毎晩焚き火を囲みながら、明日の作業の段取りや今後の話をしていた。
津波で流されてしまったことは現実として受け止め、今後の街づくりをどうしようかと、模索、検討、討論した。

潮目-フシギな震災資料館   ( p18 )

片山和一良、中村紋子著、ポット出版

震災の次の日から、まずは自分達の生活道路を確保しようと、人力でのガレキ撤去が始まった。ガレキは軽トラで公民館に運搬して焚き火をし、外に張ったテントのための夜の明かりと暖にした。

ナショナルジオグラフィック ニュース

Roff Smith for National Geographic News January 30, 2014

イスラエルで30万年前の炉を発見
イスラエル、テルアビブの東、緩やかな起伏が続く郊外に石灰岩でできた古代の洞窟がある。その中には人類の遠い過去を垣間見せてくれる魅惑的な風景が広がっている。今から30万年以上前、複数の家族が定期的に調理していたと思われる既知のものでは最古の炉が見つかった。・・・・・

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20140130003

「神保町『二階世界』巡り」書評

矢吹申彦筆 中国新聞(平成22年1月10日)

まず、人物評が面白い、というより面白いと認めた人しか書かない。・・・・次に書評が面白い。・・翁の書評は、書評が対象の本の内容を超えている?と思うほど面白い。・・・・同じ伝で、町巡りも東京への想いも並んでいる。そして最後は巻末の「焚き火系」の文芸と俳句。
恐らく翁としては新しい発見の面白さである「焚き火系」を、たちまちの内に収集(俳句だけでも200句)、解説してみせる。今日の東京に翁がいる意味。それを問う本である。

潮騒   ( p77 )

三島由紀夫 新潮文庫(平成24年2月5日 135刷)

若者と少女とは炎をへだてて向い合った。
若者が右へやや体を動かすと、少女も右へすこし逃げた。そこで焚火がいつまでも二人の間にあった。

縄文人追跡   ( p84 )

小林達雄 ちくま文庫

どうも(竪穴住居の中の)炉では原則として一切の調理、食事はしなかった。少なくとも、そうした事実を裏付ける証拠はほとんどないのである。縄文人は煮炊き用の土器をたくさん持っていたのに、その土器が竪穴住居の床面からも炉からも出土した例がないのだ。・・・・・火は、いちいちかまってやらないとすぐ消える。だからかえって、その火を消さないように燃やし続け、火種を絶やさないことが肝要とされ、炉がその任に充てられていたのだはなかったかと思われる。火が象徴する観念によって竪穴住居のウチはさらなる主体性を主張してあくまでソトとの対立を深めようとしていたのだ。
かくて、いままさに燃える炉の火は、過去からの継続の上にあり、未来につながってゆく。・・・・・炉と炉の火の象徴性は、見え隠れしながら脈々と心の中にたゆたい、やがて民家の囲炉裏とその火へと変身を遂げた。

縄文人追跡   ( p225 )

小林達雄 ちくま文庫

(上野原の縄文集落遺跡では)あらかじめ焚火で熱した石を集め、その上に適当な葉で食物を包んで蒸し焼きにする調理用の集石炉が39基。またトンネルで連結した土坑15基は、一方の土坑の底で火を焚き、その煙をもう一方に誘導して獣肉などの燻製作りをしたものと推定される・・・・

アルケミスト   ( p87 )

パウロ・コエーリョ著(山川紘矢+山川亜希子訳) 角川文庫

少年は海を見たり、火を見たりすると、そこに永遠の力を感じて、いつも静かになった。僕は羊たちからものごとを学び、クリスタルからも学んだ、と少年は思った。砂漠からも何かを学べるにちがいない。

荷抜け   ( p74 )

岡崎ひでたか 新日本出版社

くらい堂の奥から、牛方の守り本尊、大日如来に見つめられている。静かだが、焚火のはぜる音さえも、恐ろしい事件の重大さを感じさせた。

荷抜け   ( p231 )

岡崎ひでたか 新日本出版社

蓑を脱ぎかけたが、口も冷えこわばって、うまく声が出ない。焚火にもぐらんばかりに近寄った。

荷抜け   ( p237 )

岡崎ひでたか 新日本出版社

本堂前に小谷百姓衆のたたかいの本陣がおかれ、赤あかと篝火が燃えていた。十人ほどが焚火をかこみ談合していた。

荷抜け   ( p239 )

岡崎ひでたか 新日本出版社

その場の小谷の衆は数倍の人になり、焚火をはさんでねぎらいつつ、四ケ荘やほかの村むらの情勢を聞いては気持ちをたかぶらせた。

時事川柳

南本昭和(広島県安芸郡) 中国新聞平成21年1月11日

お互いに職には触れず焚き火の輪

やまびこ

余村泰樹 中国新聞平成21年2月24日

森や木で遊ぶ楽しさを伝える「森のおもちゃの会」が企画したイベントに先日、家族で参加した。たき火でパンを焼いたり、拾った松ぼっくりや落ち葉で炭を作ったり・・・・里山の自然を満喫した。

phoenix   ( p12 )

2011.10/vol.228

(江の川カヌー公園さくぎ【秋キャンプ、べからず集】)
火直火でたき火するべからず。-------たき火をする時はたき火台が必須。直火は自然を傷めます

封神演義(上)   ( p77 )

許仲琳 偕成社

旦那さまの恩に報いるためであれば、焚き火の上にも伏し、死をも辞しませぬ。なんなりと申し付けてください。

初陣(隠蔽捜査3.5)   ( p201,206 )

今野敏 新潮社

「焚き火をしたのだと言っています。」
「焚き火・・・・?」
「・・・・一戸建てに住んでおります。その庭でゴミを燃やしたのだと・・・」
・・・・・・・中島が示した衣類の袖の煙の粒子や煤は焚き火をしたと言われればそれまでだ。

異人館   ( p349 )

白石一郎 朝日新聞社

みんなで庭へ出て焚火をし、ワインなどを飲みながら、知っている限りの唄を歌い、手拍子を叩いて楽しんだ。

神々の声   ( p89 )

ロバート・M・ショック/ロバート・A・マクナリー 飛鳥新社

モンテ・ヴェルデではディレヘイのグループが焚き火跡で木炭を見つけたが、放射性炭素年代測定法によると紀元前3万1000年頃のものだった。

能 「鉢の木」

朝日新聞2013/1/19  be  7頁

あら笑止や、夜の更くるについて次第に寒くなりて候、焚火をしてあて申したくは候へども、恥ずかしながらさようの物もなく候、や、案じ出だして候、これなる鉢の木を切り、火に焚いてあて申し候ふべし。

西鶴名作集 娘盛りの散り桜   ( p127 )

藤本義一 講談社

雪の日には、たき火をして両親に寒い思いをさせまいとし、領主さまの目をおそれることもなく、ぜいたくざんまいに両親を暮らさせたので、両親としては、このうえ、なにをねがうということもなかった。

西鶴名作集 大釜の抜き残し古金屋が寝覚め   ( p166 )

藤本義一 講談社

遊びなかまが四、五人、どやどやと走りこんできて、「この寒い晩にたき火とはなんちゅう物好きなやつや」という。このなかまたちも傘がないらしく、ずぶぬれになった体をたき火でかわかしながら・・・・・・

「アリゾナ無宿」   ( p147 )

逢坂剛著 新潮文庫

たき火の反対側で、サグワロが口を開く。

「アリゾナ無宿」   ( p152 )

逢坂剛著 新潮文庫

わたしは拳銃をホルスターにもどし、足で砂をかけてたき火を消した。

「アリゾナ無宿」   ( p308 )

逢坂剛著 新潮文庫

わたしは、サグワロが集めた枯れ木でたき火を作り、コーヒーをわかした。

「アリゾナ無宿」   ( p308 )

逢坂剛著 新潮文庫

たき火とコーヒーさえあればなんとかなるが、水と干し肉だけのピートが心配だ。・・・・たき火の明かりが、断崖にちらちらと反射する。

「アリゾナ無宿」   ( p310 )

逢坂剛著 新潮文庫

わたしはカードを投げ出し、たき火のそばから飛んで立った。

「アリゾナ無宿」   ( p314 )

逢坂剛著 新潮文庫

わたしは自分の手紙を、たき火に叩き込んだ。

「アリゾナ無宿」   ( p315 )

逢坂剛著 新潮文庫

捜索隊が現れたとき、わたしたちはもどって来たピートと一緒にたき火を囲み、浅い眠りをむさぼっていた。

香乱記(一)   ( p32 )

宮城谷昌光著 新潮文庫

焚き火のまわりで笑いが渦となった。田横も兄とともに笑った。

友よ静かに瞑れ   ( p250 )

北川謙三著 角川文庫

大きな焚火だった。申し訳程度の屋根がある小さな小屋が焔に照らされてぼんやりと闇に浮かんでいた。

友よ静かに瞑れ   ( p250 )

北川謙三著 角川文庫

まず、人数を確かめることだ。焚火のそばには、ひとりいるだけだった。

友よ静かに瞑れ   ( p251 )

北川謙三著 角川文庫

焚火のそばに竜太が坐らされていた。・・・・焚火のパチパチという音まで聞こえた。

ほうき星   ( p277 )

山本一力著 角川書店

空は晴れ渡っているが、波止場の凍えはきつい。天保山神社の石段下では、仲仕たちがたき火をしていた。たき火のわきには火の用心で、水の入った四斗樽がふたつ置かれていた。・・・・・・
たきひにあたりながら、仲仕たちは先達をなつかしんでいた。

ほうき星   ( p278 )

山本一力著 角川書店

長生きがなぜ、めでたいことなのか。
そのまことの意味を、たき火にあたる仲仕に教えてもらった。

ほうき星   ( p288 )

山本一力著 角川書店

たき火にあたりながら、港の漁師が江戸のうわさを交わしている。さちはむしろをまとったこどもの顔に、幹太郎と善次郎を思い浮かべた。

「こだわっとる農」その後(5)

佐々木睦 中国新聞「緑地帯」 平成21年4月1日

(1964年、アメリカの教育協会議事録に載った、ヘンリー・ターナー・ベイリー作「こどもの生まれながらの権利」を抄録紹介するなかに)
「・・・子どもは魚をとり、干し草の山に乗り、野営をし、たき火で料理をし、見知らぬ土地を歩きまわり、大空の天井の下で眠る機会を持たなければならない・・・」

疾走の夏   ( p208 )

北方謙三著 恒文社

『怒りの葡萄』を読んだのは、高校生のころだった。
野原に仕掛けた罠で野兎を捕まえ、それを焚火で丸焼きにして食う場面。男たちの唇が、脂でテラテラと光り、それを焚火が照らし出す。

黒又山ピラミッドを透視する   ( p114 )

有賀訓筆 「ムー」no.341 2009年4月

縄文時代に完全に入れ替えられ、単なる焚き火跡とは考えられない厚い炭化物層で覆われている。・・・・
地面の大きな石の上に、死んだ白い鳥を何羽も置いている。白鳥だ。食料でしょう。焚き火の中にでかい壺を置いて何か煮てる。湯気がもうもうと出てます。

西鶴名作集 闇がりの手形   ( p24 )

藤本義一 講談社

麻の単衣の着物を借りて重ね着をし、一晩ぢゅうたき火をしてお茶を飲んで、時間をついやすしかない。
・・・・・それを聞いているうちに、いろりの松のたき火もきてはて、いびきばかりとなった。

西鶴名作集 奈良の庭竈   ( p107 )

藤本義一 講談社

どこの家でも正月には庭竈といって、土間に新しいいろりをつくり、釜をかけてたき火をし、敷物を家の内じゅうに敷き、旦那も奉公人もいっしょになって楽しく飲み食いに興じる。

剣鬼・根岸兎角   ( p70 )

峰隆一郎著 光文社発行

宿場では焚き火をして多くが集まっている。兎角はその輪の中に入った。

剣鬼・根岸兎角   ( p71 )

峰隆一郎著 光文社発行

「先生、三十人ほどいた。あちこちで焚き火をしている」

剣鬼・根岸兎角   ( p73 )

峰隆一郎著 光文社発行

屋敷の中に入る。焚き火の光を浴びて男たちが眠っている。兎角は男の髷を掴み、口を手でふさいで、咽を裂く。

白起   ( p120 )

塚本青史著 河出書房新社発行

力士たちに比べれば、頭一つ小さい男である。彼は大きな焚火の前で腕組みをして、力士たちを迎え撃つつもりらしい。
…小男は、力士の背を蹴飛ばす。力士はその勢いで焚火の中へ倒れた。

白起   ( p121 )

塚本青史著 河出書房新社発行

力士たちはようやく焚き火を消し、二体の焼け爛れた骸を路傍に並べた。
小男の狙いがやっと判った。焚き火はこの近辺を巡邏している韓兵を呼ぶためだった。

真田太平記   ( p70 )

池波正太郎著 朝日新聞社発行

うかつに焚火をするわけにもゆかぬ。
このあたりの土民の群れが襲いかかって来るやも知れなかったし、彼らに発見され、ひそかに織田軍へ密告されることにも気をくばらなくてはならぬ。

聖域   ( p127 )

北方謙三著 角川文庫発行

暑い日だった。食事をすると、焚火に薪でも放りこんだように、いきなり躰の中で炎が燃えあがってくる気がする。

聖域   ( p293・294 )

北方謙三著 角川文庫発行

書くことがないから、とりあえず火を燃やしたんだよ。あの頃おれも火の燃やし方に凝っててさ、風の通り道とか考えて、薪を組んでいたんだよ。そんなふうにして最初の書き出しが決まると、次にその人間がなんで焚火なんてしているかという疑問がでてくるわけね。
そしたら幼いころおやじに焚き火の仕方を習ったという過去が出てくるわけよ。

梅花二輪   ( p271 )

山名美和子著 新人物往来社発行

「万里の夢」燃えさしの紙片のあいだに、木ぎれをさしこむと、くすぶっていた焚き火から炎が上がった。

真田太平記   ( p31 )

池波正太郎著 朝日新聞社発行

焚火の焔に見入る佐平次の目から泪があふれてきた。

西遊記プラスα   ( p163 )

豊田有恒著 角川文庫発行

よく手入れのいきとどいた栗毛色の毛並は、焚き火にてらされて汗が光っている。

ヤマトフの逃亡   ( p271 )

山田風太郎著 広済堂文庫発行

彼らは夜も山門の外に待機していて、そこで焚火もたかなかった。もっとも銃撃を怖れたのかも知れないが。

流塵   ( p166 )

北方謙三著 集英社発行

「…このままだと、寒くて凍えて死んでしまいます。」「焚火だな。火を燃やして、そばにいるしかない。…」

流塵   ( p171 )

北方謙三著 集英社発行

煙草がもう二箱しかなく、私は一日三本と決めていた。しかし、ジッポは焚火のためには役に立った。

流塵   ( p239 )

北方謙三著 集英社発行

私は焚火の中に太い丸太を三本放りこんだ。

人生の目的   ( p213 )

五木寛之著 幻冬舎発行

…心頭滅却すれば火もまた涼しか、なんていって焚き火のなかに指を突っこんで火傷したことがありました。

湯来の民話   ( p110 )

湯来町教育委員会発行

とらへいの夜を若者たちは、焚火を囲んで、「あそこでは、出合いがしらに水をかけられ、あそこでは、気付かれた時には逃げた」とわいわい騒いで楽しんでいた。

最終審判の日   ( p42 )

グレン・クライアー著 徳間書店発行

エルサレムでは、夜が訪れるたびに人々の数がだんだん増えていて、夜遅くまで燃える焚き火のまわりでは、火を吐くような激しい説教がくりかえされていた。

最終審判の日   ( p50 )

グレン・クライアー著 徳間書店発行

右手のほうで、小さなグループの男女が服をすっかりぬぎ捨て焚き火のまえで、パンフルートの貧弱な演奏に合わせて踊りまわっていた。

最終審判の日   ( p52 )

グレン・クライアー著 徳間書店発行

カメラに写ったフェルドマンはじつに見栄えがした。聖都の夜の大気に包まれ、背景には暗い空と騒がしい群集が燃やす焚き火やロウソクの光りが見えている。

英雄ここにあり(中)   ( p479 )

柴田錬三郎著 講談社発行

すでに季節は秋を過ぎて冬を迎えて居り、陽が落ちるとともに、冷風が肌身を刺し、冬支度をしていない窮民たちは互いに身を寄せあって、わずかな薪火で暖を取ったが、明日がどうなるか知れぬ不安もあって、泣きむせぶ者も多かった。

天狗争乱   ( p359、360 )

吉村 昭著

全員が民家に入ることはできず、半ば以上は野営を余儀なくされた。村人たちは焚火をたき、炊き出しをして隊員たちを温かくもてなした。

草笛の剣(下)   ( p13 )

津本 陽著 読売新聞社刊

翌朝、孫たちは明け六つ(午前六時)の時鐘が鳴るまえに宿を出た。街道の諸所に焚火がいきおいよく炎をあげ、馬方が客を待っていた。

江戸群炎記

大久保智弘著 講談社発行

大廊下は御老中口をへて御徒部屋から左に曲がる。
突き当ると焚火の間がありそこから急に狭くなった。廊下をゆけばすぐ右手に桔梗の間がある。

海嶺   ( p255 )

北方謙三著 集英社発行

火を熾す。小さな乾いた木片に火をつけ、それを少しずつ大きくすると、やがて焚火ができあがった。

新諸国奇談   ( p49 )

阿刀田 高著 講談社発行

細く澄んだ声だ。命の短さを訴えるような悲しい響きだった。
炙き火(たきび)のそばで身を横たえ、そのまま少しまどろんだ。

新諸国奇談   ( p299 )

阿刀田 高著 講談社発行

ごっそり積んだ鹿の骨を夜を徹してたき火で炙った。

火をご馳走する   ( p25 )

山崎禅雄著 中国新聞(H14.1.26)

私の民俗学の師であった宮本常一先生がある時こんなことを言われた。
「火を囲んで話をするのはいいもんじゃよ」と。
この囲む火は電気の火でも石油やガスの火でもない。焚き火か炭火でないと効力がないと思って書斎を新築するとき、思い切って大囲炉裏を作ることにしたのである。

失業500万人の近未来学   ( p175 )

水木 楊著 文芸春秋二月特別号(H14)

電気・ガスを止められる家庭が続出し、木造物を断りなく引っ剥がして焚き火する光景があちこちで見られる。

とんどの感動 来年も

南本昭和著 中国新聞(H14.1.16 広場)

たき火を囲む親ぼくの輪の広がりを見て、この感動が来年も再来年も続けばよいがと思った。

落陽昿野に燃ゆ   ( p100 )

伴野 朗著 角川書店発行

三人は野営の準備にとりかかった。十月中旬の満洲の夜はもう寒い。冬の前触れがひたひたと近づいているのを感じる。焚火が用意された。肉を焙り、乾米を食った。

落陽昿野に燃ゆ   ( p101 )

伴野 朗著 角川書店発行

満天の星が静かにまたたいている。夜気は一段と冷たくなっていた。腕時計は十一時を指していた。焚火が消えかかっていた。彼は起き上がって集めておいた枯木の枝をくべた。
しばらく煙っていたが、やがて火が燃え上がった。

企業戦士の悠々自適   ( p183 )

河島喜好著 文芸春秋二月特別号(H14)

ところがこの小屋がすごかった。山のてっぺんにあるんですが、室内の壁面が焚き火で真っ黒になっていて、その古色蒼然とした雰囲気が素晴らしいんです。

ジャフメイト   ( p15 )

H14.3

たき火の煙が路上に漂っていて、その煙を抜けた時渋滞の最後尾に追突。

なんてったって焼き芋   ( p28 )

殿塚悦子著 中国新聞(H14.2.5 広場)

昔のようにたき火ではないが、オーブンやストーブを使って焼き芋を作る。

密約の地   ( p167 )

ジャック・ヒンギス著 早川書房発行

焚き火の前にしゃがんでお茶を飲んでいる。
みすぼらしい服の女たちや数頭の痩せこけた馬のそばで遊んでいる子供たちまで、すべてのものに貧しさが染みついてきた。

密約の地   ( p168 )

ジャック・ヒンギス著 早川書房発行

カール・モーガンがやってきた。馬が焚き火の灰を踏みにじった。

新釈 遠野物語   ( p75 )

井上ひさし著 新潮文庫

(雉子娘)
ぼくは囲炉裏からすこし遠くへ座を移した。
五月初旬の焚火はやはりすこしもてあます。

楊令伝(一)   ( p37 )

北方謙三著 集英社

野宿で、兎の肉を焚火で焼きながら、候真は言った。武松は飛礫がうまく、よく兎を打った。

楊令伝(一)   ( p51 )

北方謙三著 集英社

燕青は、焚火のそばに腰を降ろし、新しい小枝を足した。
束の間、炎は小さくなり、それから大きく燃え上がった。ようやく身を起こした候真が、吐いていた。それが終わると、這うようにして焚火のそばまできた。

楊令伝(一)   ( p130 )

北方謙三著 集英社

焚火は、燃え盛っている。外海にむいた海岸なら、どこからも見えることはない。もともと、この島を見つけ、船隠しを作ったのは、李俊の率いる梁山泊水軍だった。

楊令伝(一)   ( p182 )

北方謙三著 集英社

蔡福は湯来を掘ってまわりに積み上げ、しゃがんでいれば風が当たらない場所を作った。それから、小枝を集め焚火を燃やした。
女真の地には森が多く、いま木立は凍ったようになっているが、馴れれば枯れた枝は見分けられる。

楊令伝(一)   ( p214 )

北方謙三著 集英社

王定六は、小さな焚き火を作り、そこで干し肉を炙った。ほかには、きのう買った饅頭が三つあるだけだ。

楊令伝(一)   ( p215 )

北方謙三著 集英社

干し肉が、いい匂いをあげはじめた。王定六は饅頭を小刀できれいに半分にし、水に浸ませて、焚火のそばの石の上に置いた。

楊令伝(一)   ( p217 )

北方謙三著 集英社

王定六は小屋に入らず、消えかかった焚火のそばに横たわった。

楊令伝(一)   ( p218 )

北方謙三著 集英社

いつの間にか眠り、夜明け前に眼醒めた。まだ残っていた燠を使い、小さな焚き火を熾した。

楊令伝(一)   ( p295 )

北方謙三著 集英社

花飛麟は焚き火に薪を足して、公淑は寒くないようにし、それから兎を獲りにいった。近くに、人の気配がないことは、何度か確かめた。

楊令伝(二)   ( p26 )

北方謙三著 集英社

三人で焚火を囲んでいた。こんなふうな野営は久しぶりだ、と史進は思った。

楊令伝(二)   ( p27 )

北方謙三著 集英社

李立は、燕青と一緒だった。五人で、焚火を囲む恰好になった。猪は、すでに吊るされ、焼かれはじめている。大鍋で、内臓も煮られているようだ。「どうだったのだ?」焚火を見つめながら、呼延灼が言った。燕青も、やや顔をうつむけ、炎に眼をやっている。爆ぜる音が、二、三度し、炎のかたちが変わった。

楊令伝(二)   ( p37 )

北方謙三著 集英社

肉の脂で唇をてらてらとさせた呼延灼が、遠くを見るような眼で言った。宋江と焚火を囲みながら肉を食った思い出が、史進にも数度しかなかった。闊達なものは表面に見えず、いつも茫洋としていたが、細かいことにずいぶん気を遣っていたのだ、とも思う。

楊令伝(二)   ( p142 )

北方謙三著 集英社

食料は、担いでいた。雪が積もった木の、枝を払い、それを燃やして焚火をすることもできた。雪の上でも、風の通り方を考えてやれば、火は燃えるのだ。

楊令伝(二)   ( p260 )

北方謙三著 集英社

外が、騒々しくなってきた。武松と候真が、鹿を射てきたのだという。大きな焚火が燃やされ、鹿を丸焼きにする準備がはじまっていた。

楊令伝(二)   ( p262 )

北方謙三著 集英社

楊令が腰をあげ、呉用もそれに続いた。
焚火の上に、鹿が吊るされていた。村人たちにも分けられるらしく、焚火の周囲には、数十人がいる。鹿を押さえさせ、武松が肉を切り取りはじめた。

千夜一夜物語(4)   ( p58 )

バートン版 角川書店 S42.10.30発行

私はある晩オマルといっしょに外へ出ましたが、歩いてゆくうちに燃え盛っている焚火の近くへやってきました。

千夜一夜物語(4)   ( p59 )

バートン版 角川書店 S42.10.30発行

ところでオマルは顎鬚が長うございましたから、焚火の煙が鬚の毛のあいだを伝うて流れ出ました。

千夜一夜物語(4)   ( p59 )

バートン版 角川書店 S42.10.30発行

アスラム、ほんとうにひもじくて泣いているのだな、あの焚火の仔細が分からないまま、通り過ぎないでよかったのう、と申しました。

千夜一夜物語(5)   ( p21 )

バートン版 角川書店 S42.10.30発行

隊商駐まりや、恋の火で露営の焚火を燃やします。

新トロイア物語   ( p228 )

阿刀田高著 講談社文庫

その陣営は、ネストルの築いた砦とは離れた松林の中にあって、孤立していた。背後に数艘の船を浮かべ時折、上陸して焚火を囲む。羊を焼き、酒盛りに興ずる。恰好の目標に見えた。

ビールうぐうぐ対談   ( p41 )

東海林さだお、椎名誠 文春文庫

東海林 要するに火ですよね、火。
椎名 そうそう。五百万年前に、人類が焚火をやったときが始まりだね。
東海林 その前に自然発火があった。

ビールうぐうぐ対談   ( p90 )

東海林さだお、椎名誠 文春文庫

東海林 いい雰囲気になってきた。
椎名 それに焚き火があるでしょう。いてもたってもいられない気分で、二度と同じ形にならない炎の真似をするんじゃないですかね。
東海林 道入は、火から。

ビールうぐうぐ対談   ( p100 )

東海林さだお、椎名誠 文春文庫

そこから一足飛びに、二十代のときに、焚き火囲んで、酒飲んでインディアン踊りやるとこまで飛んだのが、我が踊り経歴。

JAF Mate 2010年12月号

JAF

(風の詩|第70回|初冬 星野富弘=詩・画)さざんか
「冬になりきれない冬が ぽっと顔を 赤らめて さざんか 咲いた」
(投語 舘内端=自動車評論家)
「垣根の曲がり角でたき火をするのは、もう少し先ですね」
(答語 星野富弘)
「秋風に乗って 子供たちの 遊ぶ声が 聞こえて来ます。 どんな歌よりも 好きです」

青雲はるかに(下)   ( p31 )

宮城谷昌光著 集英社文庫

休憩のとき数人の仲間と焚き火にあたっていると、背後で女の声がした。范雎は首をまわした。--夏鈴か。

文芸春秋スペシャル(季刊秋号)   ( p116 )

全学共闘会議いわゆる「全共闘」の闘争システムは、わたしたちの六六年早稲田「学費値上げ反対」闘争の中から始まった。机やイスで文学部をバリケード封鎖、夜はキャンパスでたき火してゲバ棒たてて、機動隊・右翼のスト破りに対抗した。楽しかったね。キャンプ・ファイヤみたいで。(吉田司 ハチャメチャな時代にサンキュー!)

札束時代   ( p141 )

清水一行著 角川文庫

煙草を分けあった男たちに交じって、竜作、たき火の前へ座りこんだ。

札束時代   ( p165 )

清水一行著 角川文庫

そのうち浮浪者が工事現場へ入りこんで焚き火をするようになった。----泊り込みの作業員の目の前で、張ったばかりの目隠しを剥がし、焚き火にくべたりしはじめたのである。

まねき通り十二景   ( p254 )

山本一力著 中央公論新社

おもてで燃やすたき火などの裸火を、公儀はきつく禁じていた。
真冬の江戸は家屋の材木が乾ききっている。たき火から飛び散った火の粉が、大火事を引き起こしかねないからだ。

Selected Poems   ( p47 )

Witter Bynner著 岩波書店 2005年5月

Come, warm your hands
From the cold wind of time.
I have built here under the moon,
A many-colored fire
With fragments of wood
That have been part of a tree
And part of a ship.

Were leaves more real,
Or driven nails,
Or fingers of builders,
That these burning violets?
Come, warm your hands
From the cold wind of time.
There's a fire under the moon.

              流木
どうぞ、ここにきて、
吹きすさぶ歳月で冷えたその手を
あたためて。月の下に
色鮮やかに燃えるこの火を、
わたしがおこしたーーかつて大木の
一部だった、そして船の一部となった
木片を集めて。

揺れるこの炎の菫(すみれ)より、木の葉のほうが
現実のものだったといえるだろうか。
打ち込まれた鉄釘のほうが・・・・・。
どうぞ、ここへきて、
吹きすさぶ歳月で冷えた手をあたためて。
月の下に、火が燃えている。

果てしなき流れのなかに   ( p284 )

藤原てい著 中央公論社発行 1989年

とにかく、掃除をすると言ったてまえ、私は塀の外へ出て掃き出した。もくれんの木の下は、うず高く積もっていていて、がさがさと音がしていた。雨にぬれたらしい下積みの葉は、すでに腐食がはじまっていて、そのかすかな匂いは、私に村の奥の細道を思い出させた。昔、薪拾いに、雑木林をわけ入った頃、よく、その匂いがしていたものだった。
私は丁寧に掃き集めて、火をつけた。
その炎の美しいこと。白い煙の中で、朱色にゆれている。香ばしい匂いがたちこめている。この都会のコンクリートの上で、この匂いに出会うとは。
ふと、足音がした。
「あら、たき火ですか」
さきほどの婦人である。
「いい匂いのものですねえ」
私は語りかけようとした。
「そんなに煙を出さないでください、家に赤ちゃんがねむっていますからね、煙公害になりますよ」
婦人はそう言いながら、手で煙を払いのけるようにして、口をおさえた。
私はふっと考えてしまった。この煙は、公害になるのだろうか。こんないい匂いの煙が。私はよく知らないが、秋の空へ、かすかに消えてゆく煙を眺めながら、妙に目頭が熱くなってきた。

Desiree's Baby.(デジレの赤ちゃん)

Kate Chopin著Penguin Classics 1999 ( 初版は1893) 年発行

Some weeks later there was a curious scene enacted at L'Abri. In the centre of the smoothly swept back yard was a great bonfire. Armand Aubigny sat in the wide hallway that command a view of the spectacle; and it was he who dealt out to a half dozen negroes the material which kept this fire ablaze.
A graceful cradle of willow, with all its dainty furnishings, was laid upon the pyre, which had already fed with the richness of a priceless layette. Then there was a silk gowns, and velvet and satin ones added to these; laces, too, and embroideries; bonnets and gloves; for the Corneille had been of rare quality.
The last thing to go was a tiny bundle of letters; innocent little scribblings that Desiree had sent to him during the days of their espousal. There was the remnant of one back in the drawer from which he took them. But it was not Desiree's; it was part of an old letter from his mother to his father. He read it. She was thanking God for the blessing of her husband's love:--
"But above all," she wrote, "night and day, I thank the good God for having so arranged our lives that our dear Armand will never know that his mother, who adores him, belongs to the race that is cursed with the brand of slavery."

数週間後に、奇妙な場面がラブリで見られた。きれいに掃いてある裏庭の中央には大きな焚き火が焚かれていた。この光景がよく見える広い玄関ホールには、アルマン・オービニーが座っていた。火を燃やし続けるための材料を六人ほどの黒人たちに配っていたのは彼だった。
柳製の優雅なゆりかごが、薪を積んだ山のうえに置かれたが、そこには既にたくさんの高価な新生児用品一式が置かれていた。それから絹のガウン、そしてビロードやサテンのガウンにレースや刺繍されたものが加わり、ボンネットや手袋も続いた。結納の品は稀にみるすばらしいものだった。
 最後に燃やされたのは、手紙の小さな包だった。二人が婚約していた時に、デジレが彼に送った、無邪気で短い走り書きである。彼が包を取り出した引き出しの奥に、手紙の切れ端が残っていた。しかし、それはデジレのものではなく、彼の母親が父親に宛てた古い手紙の一部だった。彼はそれを読んだ。母は、夫の愛情という恵みを与えてくれた神に感謝していた。
 彼女はこう書いていた。「何よりも、善良なる神様に昼も夜も感謝しているのは、アルマンを愛しているこの母が、奴隷制の烙印によって呪われている人種の一人であることを、アルマンが知ることのないように神様が取り計らってくださったことです。」 

(短編小説の中で焚火の場面がありました。悲しい物語です。南北戦争の始まる前のアメリカ南部、ルイジアナが舞台。ある白人の旧家に生まれた赤ん坊にかすかではあるが黒人の特徴が現れ、いたたまれなくなった妻は赤ん坊と共に川の中に消えて行くのです。夫は妻と赤ん坊の衣類や家具などを大きな焚火の中に投げ入れ、最後に燃やされたのは夫の母親の手紙であった。この母親こそが、外見は白人だが過去において黒人の血が流れていたことが、その手紙に書かれていた。趣旨に合うかどうかわかりませんが、送らせていただきます

ポプラの秋   ( p83 )

湯本香樹実著 新潮文庫 1997年6月

「お芋、食べていきませんか?」
焚き火が燃え盛っていればいるほど、声をかけられた人たちがすうっと誘いに応じたのは、不思議なほどだ。犬の散歩の途中のおじさんとか、保険のセールスの女の人とか、顔中を泥と涙だらけにして、壊れた自転車を押していた男の子とか。皆、あまり口をきかなかったような気がする。実際、お芋が熱かったから口がきけなかったのかも知れないけれど、そうやって見ず知らずの者どうしが、おばあさんの庭でひとつの火を囲んで、ものを食べている-----その記憶が、とても静かな絵のように、私のなかに焼きついているのだ。

十和田湖の巨大水中ピラミッド   ( p127 )

有賀訓 ムー2008/3 No.328 学研

昭和21年に本格的な発掘調査が行われた太陽環状列石では、地中から大量の木炭が見つかりました。それは単なる祭祀の焚き火跡ではなく、炭素を利用した地電流制御のような科学的機能を目的としていた可能性があります。

馬賊戦記   ( p45,154,271 )

朽木寒三著 番町書房

野宿する旅人を狙う狼が、餓死寸前の胃袋をかかえてたき火のおとろえるのを待つように、白朗は地べたに尻をついたままじいっと待った。馬賊たちは、飯の途中で酒をのみ始め、2時間も3時間もさわいでいた。
・・・
氷の裂け目をこえるとき、馬賊らは広く横に散開して次々と馬を跳らせた。一騎が氷を踏み割って水中に落ちたが、馬賊らは嬉々としてこれを救い上げ、焚き火で乾かしてやりながら元気よう冗談をかわした。
・・・
山賊というのは、日本の講談に出てくるような、旅人を狙って追いはぎをし、ふだんは山の中でたき火をかこんでイノシシの肉かなんか食っているああいうのではない。ふだんは百姓をしていて、通行の旅人もここが山賊部落だとは気がつかないぐらいだ。結局彼らは、大挙して村を出撃し、遠くはなれた土地の馬車隊を襲い、或いは部落を襲うのである。

詩稿「ひびいてゆこう」

八木重吉

愛の家

まことに 愛にあふれた家は
のきばから 火をふいているようだ

『堀口大学全集』第1巻   ( p271 )

小沢書店  1982

お七の火

八百屋お七が火をつけた
お小姓吉三に逢ひたさに
われとわが家に火をつけた

あれは大事な気持ちです
忘れてならない気持ちです

街角の科学誌   ( p49 )

金子務著 中公新書

(ヘラクレイトスは言った)「万物は火の交換物であり、火は万物の交換物である」
そして火はまたロゴス、つまり論理あるいは理である、ともいった。われわれの内なるロゴスの燃えるという性質が、最良の魂では乾燥し、酔った最悪の魂では湿っている、という。自分にではなく万人に共通するロゴスに聞いて、万物が一つ、火であると認めるのが知恵というものである。

天狗争乱   ( p374 )

吉村 昭著

隊員たちは、所所で火を焚き、それをかこんで暖をとった。体は雪におおわれ、足が冷たくなっているので足ぶみをつづける。
衣服は濡れて凍りついていた。

鷲は舞い降りた   ( p377 )

ジャック・ヒンギス著 早川書房発行

「きょうはなんの日だか知ってる?十一月五日。だけどあのヒットラーのおかげで焚き火が出来ないわ」
「でもいいの」「今夜きて、あなたの夕食を作った後、二人だけの小さな焚き火をするから」

陸軍中野学校の東部ニューギニア遊撃戦   ( p48 )

田中俊男著 戦誌刊行会発行

宵のうちは広場の数ヶ所で焚火を囲み、ワイワイ、ガヤガヤしていたが、今はもう寝静まったか、焚火は消えて人の気配はない。

陸軍中野学校の東部ニューギニア遊撃戦   ( p50 )

田中俊男著 戦誌刊行会発行

第二ダキサリアの敵も宵のうちは非常態勢で自動小銃を片手に焚火に当っていたが、これも同じ意味での警戒と判断していた。

陸軍中野学校の東部ニューギニア遊撃戦   ( p52 )

田中俊男著 戦誌刊行会発行

壕は掘ってあっても配兵はなく、武装はしていたが、焚火を囲んでの雑談も前半夜までで、二十二時頃には火も消えて寝静まってしまいました。

陸軍中野学校の東部ニューギニア遊撃戦   ( p58 )

田中俊男著 戦誌刊行会発行

分隊の露営地で焚火を囲んで雑談していると…

陸軍中野学校の東部ニューギニア遊撃戦   ( p83 )

田中俊男著 戦誌刊行会発行

仮小屋の両隊長室前を清掃し丸太の仮設テーブルも出来上がったが、灯明はなく焚火の灯りと上空半弦の月明かりの下で歓迎会は盛大に始まった。

陸軍中野学校の東部ニューギニア遊撃戦   ( p226 )

田中俊男著 戦誌刊行会発行

その晩は各隊共保存のきかぬ臓物を当夜の食糧とし、肉は丸煮して取り出し、焚火で乾燥、スープは朝食のおかず。

陸軍中野学校の東部ニューギニア遊撃戦   ( p242 )

田中俊男著 戦誌刊行会発行

敵産食も既に尽き、山菜・野草のごった煮を飯盒で当番が運んできた。土間の焚火の明りで中身を覗いて見て驚いた。真っ白な肉をつけた小鳥の骨付き足が見えたからである。

陸軍中野学校の東部ニューギニア遊撃戦

田中俊男著 戦誌刊行会発行

土間の焚火の傍らでは義勇兵達が車座になって何やら藩語と日本語の混合で談笑していた。

ハリー・ホッターと賢者の石   ( p13 )

J・K・ロ−リング著 静山社発行

たぶん早々と「ガイ・フォ−クスの焚き火火祭」でもやったんじゃないでしょうか。

ハリー・ホッターと賢者の石   ( p207 )

J・K・ロ−リング著 静山社発行

中は一部屋だけだった。ハムやきじ鳥が天井からぶら下り、焚き火にかけられた銅やヤカンにはお湯が沸いている。

天風録   ( p1 )

中国新聞

備後・新市町の吉備津神社では、夜空を焦がすたき火を囲んで奇想天外の大ホラを競う。

ジャフメイト 第38巻第2号   ( p35 )

第8回 林望のテーマのある旅

千倉町、冬の朝。海辺のあちこちに漁師たちがたき火で暖をとる風景がある。

国民の歴史   ( p319 )

西尾幹二著 産経新聞社発行

また次の「百人一首 乳母が絵説」の焚き火のモチーフは火とか水とかというものが基本的に二次元で描かれているもうひとつの例である。

風塵の武士   ( p86 )

水澤龍樹著 双葉社発行

かたや忠治は眉をひそめ、凄い目つきで杢兵衛をにらんだ。彼にしてみれば、苦労して木切を集め、ようやく燃やしかけた焚火に向って、冷水をかけられたような状況だった。

風塵の武士   ( p122 )

水澤龍樹著 双葉社発行

実はな、おそ霜がふりそうな夜にゃ、あちこちでたき火をするんだよ。

主人の実家の裏山を根城に   ( p6 )

村重玲子 中国新聞

根気強い主人は冬の寒い日はたき火で暖をとり、春に小鳥のちえずりを励みに道づくりに取り組んだ。

海王伝   ( p13 )

白石一郎著 文芸春秋発行

ときどき近くに獣の咆哮を聞いては起き、消えかけた焚火に枯枝をくべ、それを何度もくり返しながら、朝まで眠りつづけた。

海王伝   ( p14 )

白石一郎著 文芸春秋発行

・大きめの木の枝を二本、焚火の両端に埋めこんで立て、兎を串刺しにした横木を差し渡し、燃えさかる火の中で横木をうまく回しながら兎の体毛を焼くのである。

・満足の深い溜息をついて牛之助は焚火のそばに仰向けに横たわった。

海王伝   ( p15 )

白石一郎著 文芸春秋発行

・とび起きてみると焚火の火が消えかけていた。燐光のような青白い火が四つ、闇の中の間近で燃えていた。狼たちは飢えていた。

・牛之助は焚火の火種をおこし、枯葉をくべた。

海狼伝   ( p10 )

白石一郎著 文芸春秋発行

・笛太郎が鳥居をくぐると、焚火をかこんで輪になった男たちの一人が立上がって手をふり…

・みんなが空けてくれた焚火の前に腰をすえながら、笛太郎がきいた。

秘剣埋火(南蛮)   ( p154 )

戸部新十郎著 徳間書店発行

翌る日の朝早く城下西のはずれ、泉野の林の中に重政と九五郎が焚火を囲んでいた。そこは上口をとる者は必ず通りがかる場所だった。淡い陽が差したが、雪の残る土も風も冷たい。

秘剣埋火(南蛮)   ( p155 )

戸部新十郎著 徳間書店発行

きどうはきているな。いわぬばかりに重政を見てかすかな笑みを浮べた。重政はしかし、それに応ぜず、焚火を踏んで立ち上り、かれらの前に歩み寄った。

秘剣埋火(南蛮)   ( p157 )

戸部新十郎著 徳間書店発行

重政がいい、焚火の傍へ戻った。踏み消した火がふたたび燃え出した。

たき火が燃え移る(紙屋町火災)   ( p20 )

中国新聞

・火元とみられるガレージ内で、中にあった段ボールを燃やし、たき火をしていたところ、火が近くのバイクに燃え移り、…。
・寒かったので暖をとるために、たき火をした。

島津奔る   ( p144 )

池宮彰一郎著 新潮社発行

義弘が湯壷の縁に暫しまどろむ間に、芳は小屋を引倒し、柱と梁の細木を折って焚火の支度を調えた。
白々と夜が明ける頃、装束を着けた義弘と衣類をまとった芳は焚火に暫しの煖をとった。

彦九郎山河   ( p160 )

吉村 昭著 文芸春秋発行

彦九郎は焚火のかたわらに座り、一人で酒を飲み、紅葉をながめていた。

里山に住んで   ( p15 )

中国新聞

だんだん寒くなり、登校前にあたるたき火が子どもたちの楽しみになってきた。

最古の石材採取加工場   ( p1 )

中国新聞

接合資料は打撃による割れ面とは明確に異なり、たき火に入れて破砕した状況と似ている。

広場・山里の人情に育てられた私   ( p9 )

助信淳子 中国新聞

弁当時間の暖をとるために山の中に入って行き、枯れ枝を集めてきて、あっという間に大たき火が始まった。

雪よ 荒野よ   ( p74 )

佐々木譲著 集英社発行

矢助たち三人が入口の脇で焚火を囲んでいた。

沈まぬ太陽(一)   ( p13 )

山崎豊子著 新潮社発行

ムティソは小まめに体を動かし、焚火をたくと、食事の用意にとりかかった。

沈まぬ太陽(一)   ( p18 )

山崎豊子著 新潮社発行

テントをうつ雨の音を聞き、ちろちろと外で燃える焚火を見るにつけ、恩地に、テヘラン空港で妻子と別れた時の体が引き裂かれるような苦痛が甦って来た。

沈まぬ太陽(一)   ( p84 )

山崎豊子著 新潮社発行

焚火はいつの間にか、消えてしまっている。
ウゥーッウォーッ 四方から威嚇の声がする。

沈まぬ太陽(二)   ( p269 )

山崎豊子著 新潮社発行

薄紫の空が、やがて薄墨色に変ったと思う間もなく、夜の帳がおり、焚火の炎だけが周りをちろちろと照らしていた。

沈まぬ太陽(二)   ( p275 )

山崎豊子著 新潮社発行

夕暮になると、陽が沈むのを待たず、あかあかと焚火が焚かれ、ムティソの一家と親戚の男たちが賓客の恩地を囲んで、地酒とインパラの肉でもてなした。

始皇帝暗殺   ( p106 )

荒俣 宏著 角川書店発行

かわいそうなのは韓の市民だった。男女の別なく、服をちぎられ、木の枝を高々とかかげている。焚火の上を通ると、火が枝に燃えうつる。

ワイルド・スワン(下)   ( p28 )

ユン・チアン著 講談社発行

骨董品を打ちこわし、書画を引き裂いた。
たき火を燃やして本を投げこんだ。

ワイルド・スワン(下)   ( p262 )

ユン・チアン著 講談社発行

星空を背景に黒く浮きあがる「二狼窩(アルランウオ)のシルエットをながめ、狼の遠い咆哮を聞きながら、たき火を守って夜を明かした。

ワイルド・スワン(下)

ユン・チアン著 講談社発行

狼はずっとついてきたが、「幹枝」の端までくるとピタッと止った。たき火が目に入り、人の声がしたからだ。
母はパッと向きを変え、中へ駆けこんだ。
西昌(シーチャン)の夜を照らす光は、たき火だけだった。

慶安太平記   ( p114 )

荒川法勝著 青樹社発行

忠三郎は辻堂の外でぱちぱちという音がするので眼が覚めた。立ち上がって外をうかがうと、又蔵が堂の斜め横の空地で焚火をしていた。

慶安太平記   ( p115 )

荒川法勝著 青樹社発行

もう、遠くの森の上はしらみ、朝の陽光が焚火の辺りも照らし始めた。

空海秘伝   ( p28 )

寺林 峻著 東洋経済新聞社発行

・本堂を取り囲むようにして五ヶ所で焚き火があり、そこで燃やしていた。

・燃えるたいまつを手に舞いながら焚き火から焚き火へと移っていく姿であった。

空海秘伝   ( p92 )

寺林 峻著 東洋経済新聞社発行

空海は大槙の前で焚き火をして、自分は槙の根方の空洞で眠るようにして日を過ごした。

空海秘伝   ( p217 )

寺林 峻著 東洋経済新聞社発行

汗まみれだった作業人たちも、やれやれと腰を下ろすと、寒々と尖った風にさらされてたちまち汗が冷えていく。やがて焚き火が燃えあがると、材木運びを終えた者らがとり囲んで大きな輪をつくった。

空海秘伝   ( p218 )

寺林 峻著 東洋経済新聞社発行

ほれ、私たちの輪の真ん中に焚き火の炎に見え隠れしながら大日如来さまがちゃんと居て下さるではないか。

大江戸あぶれ者   ( p47 )

高橋義夫著 文芸春秋発行

日が落ちると庭で焚火をし、江戸から抱いてきた三味線をつまびいて長介は逸平を慰めた。

大江戸あぶれ者   ( p61 )

高橋義夫著 文芸春秋発行

嵐之助はそだ木を積み、火をつけた。……お長がその布を焚火に投げ入れた。

大江戸あぶれ者   ( p62 )

高橋義夫著 文芸春秋発行

焚火はさかんに燃えているが、白布はすでに黒い灰となった。

大江戸あぶれ者   ( p104 )

高橋義夫著 文芸春秋発行

番卒がミゲルたちを燃えさかる焚火のほうへ押しやると、群衆からは地鳴りのような声が起った。蓑に火がつき、火の柱ができる。ミゲルは焚火の中に身を投じた。

本当は恐しいグリム童話   ( p93 )

桐生 操著 KKベストセラーズ発行

ドイツのヴェストファーレン地方で行われる五月一日の祭りの際、娘たちが焚き火を飛び越す儀式で、このとき靴を脱ぎ落としてしまった娘は処女ではないとからかわれる。

姥ざかり   ( p116 )

田辺聖子著 新潮社発行

……徳川慶喜将軍が伏見鳥羽で敗れて、大阪城を退くとき、放った火であったという。祖母は白無垢の花嫁衣装で駕篭にゆられていたが、難波橋からこれを見て「うわ、大っけなトンド(たき火)やトンドや」と手を叩いてはしゃいで……

侍の灯   ( p60 )

山手樹一郎著 光風社発行

人を怒らすような悪態をつきながら、身をまもることは少しも考えていない。まるで家の中で焚火をしてよろこんでいるようなものだ。のん気というより、いくらか足りないのかもしれないなあ。

中国柳檀(99.2.12)

中国新聞

メロディーはたき火で灯油売りに来る。(広島市 西本孝子)
※たき火もままならぬダイオキシン問題

天風録(99.2.3)

中国新聞

一千年余の歴史を刻む。毎年数千人の参拝者が夜空を焦がすたき火を囲んで奇想天外な大ホラに聞き入る。

「広場」(99.1.26)

中国新聞

「とんど祭りを次世代へ継承」渡辺則之(広島県賀茂郡)
たき火を囲んでだんらんができる。このとんどは、コミュニティーの場としても最適。伝統はぜひとも次世代に継承したい。

血と骨   ( p27 )

梁石日著 幻冬舎発行

美術館で焚火を囲んでいた数人の浮浪者が、大股でゆっくり通り過ぎていく金俊平を見送った。

源氏物語人殺し絵巻   ( p269 )

長尾誠夫著 文芸春秋発行

やがて、海上には何十隻という舟が並び、雁の群れのような体形をとって、さらに沖合いの方へはなれて行く。
漁師の女房たちは男たちを見送ると、浜辺で焚火をはじめ猥雑な話に花を咲かせた。

冤罪者   ( p35、36 )

折原 一著 文芸春秋発行

遊歩道に面したその部屋から、蛇の舌のようにちろちろとオレンジ色の光が出ていたのだ。
電気の明かりにしては光の濃淡があり、小さな焚き火のように揺れ動いている。

密謀   ( p142 )

藤沢周平著 毎日新聞社発行

兼続は空を仰いだ。日は西に移っている。最後の能が終るのは夕まぐれで、暗くなる前に庭で火が焚かれるらしい。

密謀   ( p179 )

藤沢周平著 毎日新聞社発行

明朝の城攻めの先鋒には、最強の兵をつぎこむつもりだった。兼続は立って焚火のまわりをゆっくりと歩きながら指を繰った。

密謀   ( p367 )

藤沢周平著 毎日新聞社発行

石田と浅野長政が大阪城内で焚火をしているところに、登城して来た家康が通りかかった。

密謀   ( p515 )

藤沢周平著 毎日新聞社発行

白煙をあげている焚火のそばにもどって、いっとき冷えた手先を押し揉んだ徳平が、ふとうねの姿を見咎めて声をかけた。

暗殺の城   ( p152 )

津本 陽著 幻冬舎発行

うのたちは山頂の平坦な林中を一町ほどゆくあいだに、十人ほどの哨兵がいるのを発見した。
彼らは寒気を凌ぐため焚火をしていたので、遠くから姿が見えた。

四本の火柱   ( p77 )

豊田 穣著 集英社文庫発行

指定日をX日とする。X日の夜間、右のボロ切れに石油をしみこませ、次の地点において焚火を行うべし。

四本の火柱   ( p84 )

豊田 穣著 集英社文庫発行

今夜、その予行演習としてトラック付近の海面で三式弾の夜間試射を行います。航海長、海岸の焚火による測距の方はよろしいか。……焚火はゆらゆらしますので、測距儀員も初めはとまどっていましたが、もう慣れましたので、今夜は大丈夫です。

泣きの銀次   ( p204 )

宇江佐真理著 講談社発行

三日月長屋、新長屋と呼ばれる長屋の路地は人が擦れ違うこともできない狭さである。
そこに間口一間、奥行き三間の局が並び、客の相手をする。路地の突き当りには妓夫が焚火に当っていた。

大河の一滴   ( p101 )

五木寛之著 幻冬舎発行

街のなかにたむろして、段ボール箱を集めて地下道に寝泊まりしたり、昼間から公園で焚き火してお酒を飲んでいたりする。

幕末剣客伝   ( p99 )

津本 陽著 講談社発行

陽が落ち、暗くなってくると、追手は五、六カ所で焚火をはじめた。
提灯を掲げてしきりに行き来しているのが、登たちの眼に妙にきれいに見える。
焚火の火光は、意外に遠くまでとどき、逃げれば発見されるにちがいないと登は思った。

四十七人目の浪士   ( p198 )

池宮彰一郎著 新潮社発行

その坂の下、大枝中山の奥にある住居の庭で、孫左衛門はきょうも焚火を続けていた。
人の丈ほど深く堀った穴に散り尽した樹々の落葉を掻き集め焚く。

四十七人目の浪士   ( p214 )

池宮彰一郎著 新潮社発行

疲れた足を曳く道の傍に、石屋の職人がかじかむ手を焚火で温める姿が眼に映った。

天使の囀り   ( p26 )

貴志祐介著 角川書房発行

我々はジャガー避けに起こした焚き火のまわりで空きっ腹を抱えて集まりました。

天使の囀り   ( p28 )

貴志祐介著 角川書房発行

・この時には、煌々と焚き火に照らし出されて、らアカリの顔の細部まではっきりと見て取ることができました。

・蜷川教授は、無造作に死骸をぶら下げて焚き火のそばに戻ってくると、ベルトを挟んでいた大きなシースナイフを引き抜きました。

山猿塾   ( p29 )

青木 慧著 青木書店発行

電灯だってないけど、林産物で焚き火ができる。

山猿塾   ( p33 )

青木 慧著 青木書店発行

なにもない造成地にテントをはり、焚き火をたいてインスタントラーメンであったまった。

山猿塾   ( p193 )

青木 慧著 青木書店発行

四日の朝は寒かったので、焚き火をして暖をとりましたが、天気は快晴で気分はハイでしたよ。

山猿塾   ( p198 )

青木 慧著 青木書店発行

どうぞ、山猿塾へおいで下さい。まあ見物というか、たき火にあたりながら雑談するというか、気楽にどうぞ。

やぶ医者のつぶやき   ( p80 )

森田 功著 ビックコミック

・数か月の間入院していた人が飲まずに隠していた薬を持って退院し、自宅の庭で薬の焚火をしたとBされた。

・Bの主は指示どおりに薬を飲まなかったから入院が長びいたのかもしれない。

拳銃稼業   ( p221 )

大薮春彦著 広済堂文庫発行

集落の外れにある佐野の猟小屋の前にテントが張られ、見張りの警官が二人、焚き火にあたりながら飯合飯の出来上るのを待っていた。

拳銃稼業「羽田上空の罠」   ( p224 )

大薮春彦著 広済堂文庫発行

焚き火を小さな山火事のように燃し、二人はウイスキーとキジの丸焼きと乾パンで夕食をとった。……浅岡も焚き火に新しい丸木を加え、寝袋にもぐりこんだ。

拳銃稼業「瀕死の38度線」   ( p270 )

大薮春彦著 広済堂文庫発行

二人はしきりに有難がり、近くの木を切り倒して盛大な焚火を作る。熾火の山にヒエ餅と毛をむしったキジを放りこむ。

伊藤眞理子詩集から「たき火」

伊藤眞理子詩集

火を焚きませんか
露路を曲がっていて
突然 立ちすくんだり駆けだしたりするように
火を焚くに格好の土のみち
照りつける午後の陽ざしも止まっている
焚き火をしませんか

何か燃えるものはありませんか
塀から枝をさしかけている
新芽にゆずった楠の落葉
焚き火のための香辛料
白い花を散らした紙屑 菓子の袋
黄燐よりも よく燃えそう

湿っぽい鹿苑寺
拒絶の石の議事堂は
どうも焚き火ごころをそそらない
水をください バケツ一杯
身の丈ほどの火を焚きたい

いっしょに焚き火をしませんか
毀れてしまった桶のたが
ぱきっと音をたてるに手頃な
やせた大腿骨ほどの枯枝
風通しのよい砦の形に組みあげて
火を放つ

久しく焚き火をしないけれど
得体の知れない線量に
きれいという間もなく灼かれるまえに
焚き火の匂いと色と音
噴きだしてくる火あそびごころ
たった身の丈ほどの拝火教

ふいに
焚き火がしたいと思いませんか
家族のための米を炊かず
凍えた指先のためでもない
火のためのたき火

甲越軍記   ( p34 )

鷲尾雨工著 恒文社発行

暖をとっていた陣中の焚火がようやく消えかかって、寒気がひしひしと身に迫り、諸兵みな寝静まろうとしていた夜半であった。

沖田総司   ( p46 )

童門冬二著 成美堂出版発行

芹沢たちは近所から障子や戸をはずしてきて往来でぼうぼう焚火をはじめた。

少年H   ( p112 )

妹尾河童著 講談社発行

・・・蛸を防波堤のコンクリートに叩きつけ、さらにナイフで切り取って焚き火で焼いて食べた。牡蛎は生でよく食べたが、殻のまま焼いてフーフーいいながら熱いのを食べるのもうまかった。

少年H   ( p190 )

妹尾河童著 講談社発行

風がビュービュー吹いて寒かったので、流木を集めて焚き火をした。濡れていた木もあったから火付きが悪く苦労したが、燃え始めるとあとは風に煽られてパチパチと勢いよく燃えた。

剣豪はなぜ人を斬るか   ( p185 )

峰隆一郎著 青春出版社発行

この日は寒かった。京の冬は寒い。底冷えがすると言われた。高弟の五人がついていた。寒いから焚き火をしていた。

常次郎氏の春夏秋冬   ( p60〜64 )

朝日新聞金沢支局著 朝日新聞社発行

年に一度の精霊火(しょうらいび)だ。今日は又お陰様で先霊の皆さんとお会い出来た。ダムの湖畔で精霊火をたいて迎えた先霊を心のふところにしっかりだきしめて帰ってきた。

(精霊火は)生木で作った大きなロウソクに火をつけ、先祖の霊をなぐさめる。・・・その精霊火をたく”生木ロウソク”だが、これを作るのは手間がかかる。
(この後、生木ロウソクの作り方が紹介されている。高さ8mの立木=タテボクが芯になる。芯は松が本式。先端に灯心のカヤを巻く。バチンスと呼ばれる直径60cmの杉玉を10個、立木の小枝にとりつける。バチンスはスギの小枝を重ねて玉を作り、クズの蔓でしばる。)

まだここに村があった頃・・・小一時間の”火まつり”に酔った人たちは、男も女も、大日川へ飛び込んでススと火の粉で汚れた体をきれいに洗い、夜を徹して盆踊りに興じたものだった。
・・・
十四日午後、小原の地蔵堂の前に旧村民三十人が集まり、精霊火を営んだ。タテボクの先の大たいまつに点火され、炎天に炎が噴き上げると、二歳の坊やから七十四歳のお年寄りまで大声をあげて先祖の霊を呼んだ。「ショーライ、ショーライ」「ゴザレー、ゴザレ」。
その声は小原の村が没したダム湖の上を渡り、対岸の山々から山びことなって帰った。それは戻ってきた霊たちの声のように思われた。

草原の国モンゴル   ( p12 )

D.マイダル著 新潮選書 1988.7.25発行

1927年、内モンゴルの南境にある周口店において40〜50万年前の人類の先祖の骨と石器が発見された。この骨の主がシナントロプスと名付けられた。石器はプリミチーブなものであった。洞窟の中ではさらに、幾千年にわたる焚き火の灰の層と多くの動物の骨が発見された。その中にはサイ、剣歯虎、熊、野生馬、水牛、猪、鹿の骨が見られた。したがってシナントロプスは猟師であって、しかも大きな動物をねらっていたこと、また火を使うことができ、しかもそれをおこすことができたことなどが考えられる。

突破者

宮崎学著 南風社

構内のそこここに焚き火がたかれ、そのまわりを大勢の学生が囲んで警戒にあたる。

秘色   ( p196 )

勝目梓著 祥伝社

焚き火というと冬のものと思いがちだが、実はそうでもない。私は夏でも気が向けば庭で火を焚いて、酒を飲みながら一人で長い時間を過ごすのが好きだった。

隠し剣孤影抄   ( p296,297 )

藤沢周平著 文芸春秋

「や、冷えて来た」
と、十太夫はわれに返ったように言った。
「中にもどりなされ。わしも家に帰る」
十太夫はやさしい声音で言った。闇があたりを包みはじめていた。
十太夫が、衰えた焚き火を踏みつけると、一瞬焔がゆらめき立ち、香信尼の白い顔を浮かび上がらせた。

神々の記憶   ( p32 )

KKベストセラーズ(ワニ文庫)1996.12.5

核エネルギーは、第3の火と呼ばれ、人類がたきぎなどによる火、電力による火についで手に入れた、まったく新しいエネルギーだといわれてきた。

私空間--雪折庵

朝日新聞夕刊 1996.10.11

福岡市の、背振山麓に雪折庵(せつせつあん)はある。庵主は毎朝散歩をしては、出会った野の花を手折り、それを写生して俳句を添える。・・・・・
松ぼっくりの焚火で、うす紫の煙の香を楽しみ、茶室に戻った。

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